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ルーダス映画サロン 2009年6月号<2009.6.20更新> (2/4ページ)

『夏時間の庭〜オルセー美術館開館20周年記念作品〜』


(C) 2008 MK2 SA-France 3 Cinema

http://natsujikan.net/
監督・脚本:オリヴィエ・アサイセス
公開:6月6日よりテアトル梅田、6月20日より京都シネマ、シネ・リーブル神戸にて公開中<102分>


 パリ郊外イル・ド・フランス地方の小さな町に、夏の陽光にあふれ草木の柔らかな緑が目に爽やかな広大な庭を持つ一軒の邸宅があった。その家は有名な画家の大叔父が生前使っていたアトリエだった。毎年夏になるとそこに住む母(エディット・スコブ)の誕生日を祝って集まる子供たち、孫たち。木登りをしたりはしゃぐ声が響いている。庭での食事は楽しい時間にもかかわらず、エレーヌは長男を呼んで「この庭や大叔父の絵画や家具調度などのコレクションを処分してもかまわない」と自分の死後の後始末を託す。彼女は子どもたちの将来を見越して、それぞれに負担がかからないようにと、死後の準備を始めていたのだ。長男はそんな対応を言下に否定する。長男のフレデリック(シャルル・ベルリング)は経済学の教授としてフランスに暮しているが、次男のジェレミー(ジェレミー・レニエ)は中国で仕事を持っている。また長女のアドリエンヌ(ジュリエット・ビノシュ)はデザイナーで世界中を飛び回っていて、近く結婚の予定である。次男と長女はもはやフランスに帰ることも稀になっている。次は大叔父の回顧展で集まることを約束し、慌ただしくみんなが去った後、エレーヌは薄明の家の中で電灯もつけず椅子に座り込んでしまう。その孤独な影はこの家の将来を示しているようだ。そして大叔父の生前からの家政婦であるエロイーズ(イザベル・ザ・ワイヤン)に「私の思い出は私と一緒に消えて行くのよ」とつぶやく。


(C) 2008 MK2 SA-France 3 Cinema

 それから一年後、回顧展のあとに突然エレーヌの死がおとずれる。葬儀で集まった三兄妹は悲しみに浸る間もなく家と膨大な美術品という母の遺産と向き合うことになる。フレデリックはそれを手放すつもりはなかったが、長女と次男は処分して財産分けすることを求める。妹と弟にとっても愛着がある家や遺品でありながら、もはや必要なものではないことにショックを受けるフレデリックだったが、現実的な問題からは逃れようはなく、遺品を相続するには莫大な相続税がかかるので、家は売却、美術品をオルセー美術館に寄贈することで合意する。

 オルセー美術館の職員たちがすべてを持ち去って、何もかもなくなった家をエロイーズが訪れ、忘れられたままだったブラックモンの花器をたった一つの思い出に、「活けられてこそ価値がある」と言い、南仏に去ったのだった。

 ある日、相続処理に忙しくしているフレデリックのもとへ、長女のシルヴィー(アリス・ド・ランクザン)が万引きで捕まったと電話が入る。喪失の悲しみに追い討ちをかけるように起きた事件に彼は打ちのめされる。

 後日、オルセー美術館にフレデリック夫妻が訪れる。そこには家ではいきいきと輝いていた美術品は、展示室ではその思いを止めてしまっているかのように感じられた。

 長男の娘シルヴィーはヴァルモンドワの家を譲り渡す前に、大勢の友人を招いてパーティーを開く。それは彼女なりにこの家と祖母の思い出にさよならの挨拶を送ったのだ。季節は移ろい、人の命は終わりがあっても、世代を越えて確かに受け継がれていくものがある。それは家族が愛した庭も家もなくなっても、豊かな未来を約束するのだった。



(C) 2008 MK2 SA-France 3 Cinema

 時代の変化によって否応なく離ればなれになる現代の家族とその絆を描いた親子三代にわたる物語である。映画評論家の中条省平氏は「やさしく深い人間的感情に包まれたある家族の物語で、中心にあるのは<家族>という主題」と言う。岡部昌幸(帝京大准教授)氏は、「もの(美術品)への愛着を確かめることで芽生える家族の愛がテーマ。それは美術品鑑賞の奥義である」と言う。

 画面のあちらこちらに登場する美術品の数々が、重要な役割を担い、時代の流れや世代交代を象徴し、時代を的確に映し出す。こうした美術品や家具は家族と共に時間の流れを生きていた時は、活き活きと精彩を放っていたのに、美術館に収められた途端、輝きを失ってしまう。展示されることで「時間の停滞」が本作のテーマである「変化」を遂に鮮やかに浮き彫りにするのである。(資料より)

 監督・脚本のオリヴィエ・アサイヤスは、「私は財産の譲渡・過去・物事や人生がどう変化していくかを描きたかった。芸術が人生からどのように誕生し、美術館に所蔵されていくのかを語りたかったのです」と言っている。
 撮影者エリック・ゴーティエは燦然と輝く夏の陽光や涼風に揺れる木洩れ日、あるいは夕暮の斜陽の移ろいなど、全編に「変化」と芳醇な情趣をもたらすことに成功している。
 録音のニコラ・カンタンは卓越した映像美にさらなる詩情を交えて、空間や自然“郷愁”時や、季節の移ろいを喚起するような調べである。

 老母と三人の子どもを演じた役者たちは、今のフランスとベルギーを代表する名優で、その他脇役にも芸達者が揃っている。三女の相手のジェームスは、クリント・イーストウッドの息子でもある。
 庭の小鳥のさえずりとエレガントな美術品・美しい音響と映像に惹かれつつ、人生の変動を受け入れる主人公たちの人間味に共感した。


 

2009年

6月20日 ECOろうそく能 〜さまざまな地獄〜【大阪ナイトカルチャー参加事業】(大阪)
7月5日 ケーナとギターの夢VOL.16(埼玉)
7月20日〜8日 志村立美 美人画展(群馬)

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